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榊原輝重税理士事務所

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名古屋発 税理士アニキの感動!笑売

2023年11月13日

年末調整はわが国特有?

11月になると、税理士事務所は年末調整の準備に入ります。

今年度の改正点を確認したり、お客様への案内を作成します。

皆さんのお手元にも生命保険の控除ハガキが届き、税務署からの封書も届きます。

 

 

源泉徴収制度の始まり

 

 

サラリーマンの方なら、ご自身の所得税(国税と住民税)はお給料をもらう時に天引きされています。

天引きされた税金は本人を代理して会社が納めます。

これを源泉徴収といいます。

お金が発生する元(これを源泉といいます)から集めるものです。

では、源泉徴収制度はいつから始まったかご存じでしょうか。

 

わが国では昭和16年に始まりました。

太平洋戦争の開戦の年です。

 

「わが国の源泉徴収制度は(中略)日中戦争のさなかの戦時増税、大衆課税を目的に始まった」

「そして年末調整は(中略)不足しがちな徴税能力を補うため、国が雇用主に手数料を支払って徴税業務を代行させたのが嚆矢であった」

(源泉徴収と年末調整~納税者の意識をかえられるか ~齋藤貴男著 中公新書 1996年)

※嚆矢(こうし)…物事のはじめ

 

戦争はお金がかかります。

そして税金を手っ取り早く徴収しようとするときは「大衆課税」によることが政府の考え方でした。

しかも徴収の事務は会社にやらせるのです。

この制度は徴収する側の論理で始まったのですね。

 

 

戦後も残った源泉徴収制度

 

 

戦争が終わっても、源泉徴収制度は残ることになりました。

戦後の税制はGHQが主体となり、アメリカからやってきたシャウプさんが指導し作られました。

シャウプ勧告により作られたので、シャウプ税制と言われています。

 

実は源泉徴収制度はなくす予定だったようです。

しかし日本の官僚は反対して、源泉徴収制度を残し、年末調整で所得税を確定させる方法にしました。

 

年末調整は、終戦後の国の徴税能力が不足していた為、国の徴税業務の手間を省き、税収を上げることが主目的だったようです。

 

「この税金の清算には、通常の場合はいわゆる確定申告を税務署へ提出して行う。

しかし、給与所得者は、大部分一箇所の給与の支払者から支払われ、

その支払者のもとで確実に清算することが可能であるので、

これらの者がいちいち確定申告を行うことは、給与所得者自身も、大変手数を要するので、

給与の支払者が給与所得者にかわつて税額の清算を行うこととしている」

(改正源泉徴収 名古屋国税局法人税課内源泉所得税研究会編 日本書館 1953年)

 

このように、会社は源泉徴収法によって、天引きした所得税を定期的に国に納付する義務を負っています。

しかし源泉徴収や年末調整を行うために莫大な事務コストを負っています。

あらっぽい言い方をすれば、国は無料で徴税の手間をアウトソーシングしているともいえるでしょう。

 

まあ、私たち税理士もここにお仕事があるわけで、コメントする立場にないのですけどね(苦笑)。

 

 

年末調整は特有なもの

 

 

年末調整が残ってきたひとつの要因として、源泉還付があるかもしれません。

昭和から平成の時代は、お給料は振込ではなく、現金でお給料を手渡ししているところも多かったです。

我が国の源泉徴収制度では、毎月の天引き分を多めに徴収しておき、

年末に確定計算すると原則還付されるように設計されています。

 

年末には毎月のお給料に加えて、年末調整の還付金が上乗せされて支給されます。

サラリーマンの方からすれば、お年玉やモチ代をもらったように、得した気分を味わうというわけです。

 

欧米では源泉徴収制度はそれほど積極的に行われていません。

ドイツが行っていますが、年末調整で還付するというのでなく、確定申告して追徴で支払うことになっています。

 

年末調整をして還付するのはわが国独特の制度といえるでしょう。

 

令和になった現在、電子申告が普通になり、税金の計算もAIがやってくれます。

お金の出納だって電子マネーやクレジットカードです。

 

昭和の戦後と比較すれば、大きく様変わりしています。

制度を考え直していいかもしれませんね。

 

皆さんの稼いだお金が年末まで国に預けているということは、

金融の考え方からすれば、利息をもらわないといけませんよ(笑)。

 

 

 

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