2025年6月12日
交際費が損金になるポイント
事業をしていると、様々な場面で「交際費」が発生します。
経営者の皆様から「領収書があれば経費になるよね?」
よく言われますが、経費とは何か?を正しく理解する必要があります。
経費と損金
経費とは、事業に必要な支出のことです。
経費は会計上の概念で、企業会計原則などに定められたルールに則っていれば、全額計上が認められます。
一方で、法人税法上の概念である損金の場合は、会計上の費用であっても、
一部または全部の計上が認められないことがあります。
法人税の計算では、計上自体を認めるべきではない費用や、
計上できる金額に制限を設けるべき費用があるのです。
税金計算する時は、これらは「有税経費」と言われ、
経費で支出したにもかかわらず税金も支出することになり、お金が会社から出て行ってしまします。
交際費が損金になるのは
交際費はもちろん経費、と言いたいのですが、税務上は要注意です。
現在、損金に含められる交際費の上限は、
① 資本金が1億円超の大企業なら「交際費のうち、飲食費の50%」
② 資本金が1億円以下の中小企業なら「交際費のうち飲食費の50%か、または800万円のどちらか多い方」
③ 個人事業主は「上限なし」
と定められています。
なんだ、個人事業主だったらいくらでもいいんだ!
交際費という勘定科目でなければいいのか!
いえ、それは誤りです。
個人事業主といえども、「事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答このほかこれらに類する行為のためにする支出」でないと経費として認められません。
個人の所得税の調査では、個人のプライベートとの切り分けを厳しく見られます。
交際費ではなく他の勘定科目でも、税法は実質で判断することにされています。
会議費や旅費、福利厚生費にしていても、内容が交際費に相当するものは交際費として損金判断がなされます。
交際費が損金となるポイント
一つ目のポイントは、「仕事に関係があるのか」。
例えば社長が一人で飲みに出かけたものは、たとえ領収書があってもプライベートの飲食です。
部下を連れて飲みに出かける「社内交際費」でも、特定の部下とだけしょっちゅう飲みに行くようであれば、
交際費ではなく給与として源泉課税されることになるでしょう。
二つ目のポイントは、「仕事に関係のある飲食と証明できるか」。
領収書はもちろん、参加者の氏名、会社名など関係性を示すもの、人数を記録しておくことが税務調査時に役立ちます。
三つ目のポイントは、「その額が常識範囲内か」。
例えば取引先との二人での飲食にかかわらず、100万円だったらいかがでしょうか。
税務調査では、その事実認定は厳しく追及されます。
あくまで常識範囲というのは定まっていないため、取引記録や関係性など合理的な説明が出来れば、損金として認められるでしょう。
少し前に巨人の坂本選手が、税務調査で2億4千万の申告漏れを指摘されました。
銀座のクラブでの飲食を経費で申告したが否認されたようです。
もちろん、クラブやキャバクラなど女性が接待するお店(風俗店など怪しいところはダメですよ)で、
得意先を接待することは交際費として認めらます。
ただし状況や金額によっては否認のリスクがあると言えます。
そもそも交際費に含まれない「飲食代1万円ルール」もあります。
この経費は「交際費」?
迷ったら信頼のおける税理士にしっかり教えてもらってくださいね。
メルマガ
【名古屋発!税理士アニキの感動!笑売】
は毎月10 日に更新します。
お楽しみに!
2025年5月10日
損益分岐点を知ると何が分かるか
「損益分岐点」とは何かご存じでしょうか?
経営者なら一度は聞いたことがあるかもしれませんね。
「でもなんだか分かりにくいなぁ」というイメージの方も多いかと思います。
損益分岐点を知ると何が分かるのでしょうか。
損益分岐点とは
事業を経営するうえで、経営者が重要視するポイントはいくつもあります。
会計の面では損益分岐点がそれにあたります。
まず、経営とは何かを考えましょう。
その答えは、利益を出して継続していくこと、つまりゴーイング・コンサーンです。
具体的にいえば、
経営とは、売上ゼロでもかかる経費(固定費)を粗利益(儲け)を上げてまかなっていく行為
なのです。
そこで経営者にとって一番関心があるのが、
現在の経費(固定費)をまかなうには、いくら売上げれば良いか
ではないでしょうか。
その売上高のことを損益分岐点売上高といいます。
つまり、損益分岐点売上高は採算のとれる(トントンになる)売上高のことです。
使った経費を回収できる売上高ともいえます。
変動費と固定費
損益分岐点売上高の求め方は以下の算式によります。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1-変動費/売上高)
この式を覚えて使いこなせる方、素晴らしい!
この算式を見て分かるように、自社の損益分岐点を出そうと思うと、
経費を変動費と固定費とに分けることが必要になります。
変動費とは、事業を営むうえでかかる経費のうち、
売上や生産量、販売数に比例して増減する経費のことです。
原材料費や仕入原価、販売手数料、外注費、支払運賃、派遣社員や契約社員の給与などが該当します。
売上が増えれば増加し、減れば減少する経費のことです。
一方、固定費とは、事業を営むうえでかかる経費のうち、
売上高や販売数量にかかわらず、常に一定の期間で発生する費用のことです。
従業員の給与や賞与、福利厚生費、設備の減価償却費、オフィスや店舗の家賃、光熱費などが該当します。
売上や販売数量の増減にかかわらず、支払う額はほぼ変わりません。
経営者の方が見ている損益計算書では、この様な区分はしていませんが、
ざっくり見るなら、仕入や売上原価は変動費、販売費および一般管理費が固定費とみてもいいでしょう。
損益分岐点売上比率で診断
自社の損益分岐点売上高が分かったのなら、損益分岐点売上比率を求めてみましょう。
損益分岐点売上比率は以下の算式で求めます。
損益分岐点売上比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高
いま手元にある損益計算書からこの比率を出してみます。
例えば、損益分岐点売上高が4,000万円で、実際の売上高が5,000万円だとします。
すると4,000万円 ÷ 5,000万円 = 80%
損益分岐点売上比率が表わしているのは、
固定費を粗利益でどれだけ余裕をもってまかなっているか、が分かります。
従って低くなればなるほど、優秀です。
- 100以上‥採算がとれていません。赤字です。経営改善をすぐしてください。
- 90台‥利益は出ているけれど、納税の支払いや借入金の返済が困難です。
- 80台‥経営は順調、なかなかですね。
- 70台‥経営は優良です。経営者の腕前は大したものです。
- 60台‥経営は超優良です。収益力抜群です。メジャー級!
損益分岐点売上比率は、ゴルフをやっている方ならイメージしやすいかもしれませんね。
とはいえ、損益計算書を分析するのはいろいろな視点が必要です。
そんな時こそ、信頼のおける税理士と話し合い、経営に生かせる決算書を作っていきましょうね。
メルマガ
【名古屋発!税理士アニキの感動!笑売】
は毎月10 日に更新します。
お楽しみに!
2025年4月16日
給与所得者の扶養控除申告書(マル扶)
4月が始まりました。
新入社員が期待と不安の中、社会人としてスタートします。
入社するとお給料をもらう前に、会社へ提出しなければならない書類がたくさんあります。
そのひとつが「給与所得者の扶養控除申告書」。
マル扶と私たちが呼んでいる書類です。
給与所得者の扶養控除申告書とは
給与所得者の扶養控除申告書は正式な表記は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。
従業員の所得税を計算するためには、扶養状況を勤務先に申告して、
該当する所得控除を受ける必要があります。
会社は扶養控除申告書に記載された従業員の扶養状況をもとに、
毎月の給与計算や年末調整を行っています。
扶養控除申告書は、正社員であろうとも、非正規社員(パートさん)であろうとも、
その雇用形態に関係なく、給与をもらう全ての従業員が勤務先に提出します。
わが国の給与所得者の税金計算は
給与所得者(サラリーマン)の所得税の計算は通常は年末調整で行われます。
年末調整とは、会社が従業員の支払う所得税を確定計算することです。
具体的には、毎月の給与や賞与から差し引かれた源泉徴収税額と、
本来納めるべき所得税額の差分を精算する手続きになります。
毎月のお給料から差し引く源泉徴収額を決めるために、
扶養控除申告書に書かれている情報が必要なんですね。
扶養控除申告書に書く内容は
まず個人の情報を書きます。
- 氏名
- 個人番号(マイナンバー)
- 住所または居所
- 生年月日
- 世帯主の氏名
- 世帯主と申告者の続柄
- 配偶者の有無
それから扶養家族です。
- 源泉控除対象配偶者
- 扶養親族
他に特別に該当することがあれば、書き加えます。
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
最後に住民税にかかる事項を書きます。
これだけあると、自分がどれに該当するかも分かりにくいですね。
経理部の方や先輩、顧問税理士に聞きながら書くといいでしょう。
またパートさんであれば、他の会社と掛け持ちでお給料をもらっていたりします。
そんな時は、メインの会社(主たる)とそうでない会社(従たる)と分けます。
それぞれを甲欄源泉と乙欄源泉といいますが、源泉税額が変わります。
いきなり本格的な税の取扱いに面食らう新社会人の方も多いでしょう。
そんなときこそ、信頼のおける税理士に尋ねてみましょうね。
【名古屋発!税理士アニキの感動!笑売】
は毎月10 日に更新します。
お楽しみに!
2025年3月10日
所得税の累進課税、勘違いしてませんか?
間もなく確定申告期限です。
すでに申告は終わりましたか?それとも追い込み中?
さて
先日こんな質問がありました。
「転職することになり、給料が上がるのは嬉しいのですが、
税率も上がってしまうので、手取りが減っちゃうんでしょうか、、、?」
「え、どういうこと?」
「900万円を超えると累進課税で税率が23%から33%と10%も上がるなら、
900万円ぎりぎり下回るようにした方がいいですかね?」
アレレ~
累進課税について、勘違いがあるようです。
わが国の所得税は累進課税です
累進課税制度は、課税金額が高くなるほど税金が高くなる仕組みです。
だから儲け(所得)が多い人ほど税金が高くなります。
ちなみにわが国で累進課税制度を採用しているのは、所得税、相続税、贈与税の3つとなっています。
ところで、
累進課税には、単純累進課税と超過累進課税のふたつがあります。
単純累進課税は、課税金額が一定額を超えると、課税金額全体に高い税率をかけます。
一方で超過累進課税では、課税金額が一定額を超えると、超えた部分のみに高い税率がかかります。
単純と超過での税額の違い
さっきの質問は「単純累進課税」だと勘違いしたのですね。
日本で使われているのは超過累進課税です。
税率は以下の通りに定められています。
- 195万円以下 5%
- 195万~330万円以下 10%
- 330万~695万以下 20%
- 695万~900万以下 23%
- 900万~1,800万以下 33%
- 1,800万~4,000万以下 40%
- 4,000万超 45%
例えば、給与所得が910万円だったとしましょう。
195万までは5%ですので、税額は9万7500円
195万~330万までは10%ですので、税額は13万5千円
330万~695万までは20%ですので、税額は73万円
695万~900万までは23%ですので、税額は47万1500円
900万~910万までは33%ですので、税額は3万3千円
これらを合計します。
146万7千円が支払う税金となります。
もしこれが単純推進課税だと
910万×33%=300万3千円
倍以上ですね!
緩やかに税金が増えるように設計されているんですね。
ほっとしました。
巷では、お金持ちの方が「日本は税金が高くて半分税金に持っていかれる」
と聞きます。
たしかに住民税が10%ですので(住民税は一定率です)
最高税率は45+10=55%となります。
ウン億円も稼ぐ人は、そう感じるかもしれませんね(汗)。
税金がかかるのは年収額ではありません
「あなたの年収はいくらですか?」
サラリーマンなら年収額が気になる所ですが、
税金計算では収入額に税金がかかるわけではありません。
お給料の経費にあたる給与所得控除を引いたあとの、
利益に相当する給与所得、
それから個人的な事情を加味した所得控除を引いた後の
課税標準に税率をかけて計算します。
だから年収が900万だとしても、給与所得は705万円、
所得控除が仮に150万あれば、課税標準は555万円になります。
早とちりしないでくださいね。
サラリーマンだと通帳の手取り額を気にしますが、
税金の計算の理解が深まれば
「なるほど、そういうことか」と思うかもしれません。
【名古屋発!税理士アニキの感動!笑売】
は毎月10 日に更新します。
お楽しみに!
2025年2月10日
支払手形の期間短縮!資金繰り対策に注意
中小零細企業は「キャッシュ(現金)が命!」
経営ではキャッシュは血液に例えられます。
血液がないと体に栄養が行き届きません。
一瞬でも途絶えると命にかかわりますね。
それと同じです。
支払手形とは
支払手形とは、
特定の期日に
決められた金額を
支払うことを約束する
有価証券。
じつは歴史は古く、江戸時代から商習慣としてあり、明治時代以降に制度や法の整備がなされました。
日本、韓国、中国などアジア圏でしかみられない特殊な商習慣です。
手形を振り出すメリットは、取引先への支払いを一定期間猶予してもらえるので、
資金繰り負担を軽減することができます。
一方で、支払手形をもらう方は、お金になるまで時間を要するので困りますね。
もちろん期日前に割引手形としてお金に換えることもできますが、割引料という利息相当分が差し引かれます。
相手都合でお金にならないのに、なんだか損をしている気分になりますね。
支払手形の期間が短縮されます
昨年秋に、中小企業庁と公正取引委員会は、下請法の運用ルールを変更しました。
2024年11月以降、従来は「繊維業は90日、その他の業種は120日」を上限としていた交付から満期日の期間(手形サイト)が60日を超える約束手形、電子記録債権、一括決済方式は、行政指導の対象としたのです。
資金繰りの事前対策
支払いサイトが120日から60日になれば、もらう側は早くお金になるので大変ありがたいですね。
例えば、11月請求額が12月に支払手形として振り出されたとします。
すると新たに発行した支払手形は2月に手形決済されます。
法律が変わる前の9月に請求し、10月に支払手形として振り出されたものも、
2月に手形決済されます。
つまり今までは1か月分しかお金にならなかったものが、2か月分入金となります。
一方で、支払手形を振り出した側は、2月、3月は支払額が倍増します。
これは由々しき問題です。
早めに資金繰り対策をしておく必要があります。
銀行、保険会社、商工会議所など、相談を持ち掛けておくことをお勧めします。
【名古屋発!税理士アニキの感動!笑売】
は毎月10 日に更新します。
お楽しみに!
2025年1月10日
消費税の会計処理は税込み経理、それとも税抜き経理のどちらがいい?
一昨年の秋からインボイス制度が始まりました。
いままで免税事業者だった方で、課税事業者になった方はおよそ15%いるとのことです。
免税事業者が課税事業者になると、会計では消費税を考慮した経理を行います。
それが税込み経理と税抜き経理です。
税込み経理とは
税込み経理は、取引に伴う消費税を取引本体価格に含めて処理する方法です。
メリットとしては会計処理自体は容易であること、
損益計算での売上金額や支払金額がキャッシュの収支と一致することです。
一方デメリットは、売上や仕入が消費税分だけ含まれて表示されてしまうため、
損益計算上では期中の利益が大きく見えてしまうことです。
決算のときに消費税計算をして経費計上するため、最後の最後に利益がガクッと減って見えてしまいます。
また支払う消費税額も、期中では財務諸表を見てパッと見て分かりません。
税抜き経理とは
税抜き経理とは、消費税分を本体価格とは別に処理する方法です。
メリットとしては、利益が正しく表示されること、
取引のたびに、仕入にかかる消費税を「仮払消費税」、売上にかかる消費税を「仮受消費税」とするため貸借対照表より支払う消費税が分かることです。
一方でデメリットは帳簿付けが複雑になり手間が増えてしまうことです。
どちらが有利なの
会計基準では原則は税抜き経理とされています。
税込み経理は、税務で認められている減価償却資産の特別償却を行うような場合、
一定の金額基準が設けられているため適用しやすくなります。
税抜き経理は、本体価格のため交際費課税や固定資産税、少額資産の特例措置を受ける場合、有利に働きます。
例えば、税抜価格が9万8,000円のパソコンを取得したと考えてみましょう。
税抜き経理方式を採用していれば、取得価額は10万円未満ですから、
減価償却をせずに一括経費計上が可能です。
しかし、税込経理方式の場合は、税込金額は10万7,800円となるため、
原則として一括計上ができません。
経費計上できる金額が大きくなるほど課税所得は減り、
その年の法人税や所得税を抑えることが出来るというわけです。
また、取得価額が10万円未満で一括計上した減価償却資産は、
市町村に支払う償却資産税の対象にはなりません。
減価償却資産に関わる節税面を考えれば、税込み経理方式よりも税抜き経理方式の方が有利といえます。
やはり手間はかかるけれど、税抜き経理がおススメですね。
とはいえ「会計の処理はよくわからない」方も多いでしょう。
そういうときは信頼のおける税理士にお尋ねになってくださいね。
【名古屋発!税理士アニキの感動!笑売】
は毎月10 日に更新します。
お楽しみに!
2024年12月10日
給与所得控除と基礎控除
さて先の選挙で国民民主党が公約した「103万円の壁」の引き上げが議論されることになりました。
ところで皆さんはこの103万円の壁についてどう理解していますか。
税金がかからない給料の上限、ハイ正解です。
ではもう少し深堀りしていきましょう。
税金がかかるのは儲けです
税金は収入の金額全部にかかるのではありません。
税金は儲け、会計の言葉でいえば利益に税金がかかります。
会社でいえば売上があり、経費があり、その差額が利益となります。
サラリーマンでいえば、給与明細総額、つまり収入金額が売上にあたります。
では経費はどう計算されるのでしょうか。
サラリーマンといえども、パソコンを買ったり、本を買って勉強したり、
時にはセミナー代を払って勉強をすることもあるかもしれませんね。
これらはもちろん経費になりますので、集計をして確定申告してもちろん構いません。
税務ではサラリーマンの経費相当分を給与所得控除として利益を計算します。
税務では利益と言わず所得といいます。ややこしいですね。
給与所得控除は収入金額の25~30%くらいに定められていますので(高額給与になると一定額です)、
ほとんどの方が実費の経費計算を選択しません。
給与所得控除の最下限は55万円となっています。
だから年間給与が55万円までなら、利益はゼロ、
だから税金はかからない、ということです。
基礎控除とは
基礎控除とは何でしょうか。
これはすべての納税者が持っている非課税枠だとお考え下さい。
わが国では憲法25条に生存権を定めており、これに基づくものとして基礎控除が定められていると考えられます。
つまり最低限の生活保障という性格を持ちます。
基礎控除の金額は長らく38万円でしたが、2019年から48万円に引き上げられています。
103万円の壁の正体
先の述べた給与所得控除の55万円と、基礎控除48万円を合わせると103万円になります。
これが103万円の正体です。
だから両方足した控除の枠内であれば、税金はかからない、ということです。
でも基礎控除の48万円ってどうなんでしょう?
48万円は12か月で割ればひと月4万円です。
「え~?月に4万円では生きていく保証なんて得られないよ!」
私もそう思います。
いまどきなら10万円くらいが妥当かな、と思います。
であれば基礎控除は120万円。
給与所得控除を合わせれば175万円。
これが適正な非課税収入の下限となるのかもしれませんね。
ちなみに
年金収入の場合、65歳以上の方の年金控除は110万円です。
お年寄りには考慮されているようです。
【名古屋発!税理士アニキの感動!笑売】
は毎月10 日に更新します。
お楽しみに!
2024年11月11日
年収の壁 支援強化パッケージ
衆議院選挙が先日行われ、野党が躍進しました。
議席数を伸長した国民民主党の公約に「年収103万円の壁」の見直しがあり、
にわかに政府・与党と協議が始まるようです。
様々な年収の壁
年収の壁は2種類あり「税務上の壁」と「社会保険上の壁」があります。
年収103万円の壁とは、給与収入が年103万円を超えると、
自分のバイト代やパート代などに所得税が課税され始める年収額のことを言います。
これを超えると自身が税金を納める対象になり、
さらに今まで自分を扶養家族としていた親や配偶者にも税金が増えることになります。
加えて国税では配偶者特別控除が減少する150万円の壁もあります。
住民税の負担が必要となる壁は100万円です。この金額は各市町村でばらつきがあります。
だいたい90万円から100万円になりますので、
「所得税がかからなくても住民税がかかってしまった!」ということも起こります。
以上が税務上の壁となりますが、社会保険上の壁もあります。
年収106万円以上では条件付きの社会保険料、130万円以上では一般的な社会保険料を負担しなくてはなりません。
年収の壁による弊害
11月ともなると年末調整が間近に迫ってきます。
すると様々な壁を回避するために、アルバイトやパートさんたちは就業調整を始めます。
経営者や事業主さんからすると、年末の繁忙期に労働力不足になり、大変悩ましいのです。
そこで政府は労働力不足に歯止めをかけるため、社会保険上の壁である106万円、130万円の壁対策として、
「年収の壁・支援強化パッケージ」という制度をつくり、令和5年10月より運用しています。
106万円の壁の対策支援
106万円の壁の対策支援は、社会保険の適用事業所(従業員101人以上)が対象となります。
具体的には以下すべてに該当する従業員が健康保険の加入対象となり、保険料の自己負担が発生することになります。
- 週あたりの所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額88,000円以上
- 2ヶ月超の期間を雇用される見込みがある
- 学生ではない
このケースで、従業員の手取り収入が減らないように、お給料をアップさせたら助成金を支給するというものです。
キャリアアップ助成金〈社会保険適用時処遇改善コース〉と呼ばれるもので、労働者一人当たり最大50万円もの助成が行われます。
なお、2024年10月以降は、被保険者数51人以上の企業も社会保険適用拡大の対象となったため、
さらに多くのパートタイム・アルバイト従業員に社会保険が適用される見込みとなっています。
130万円の壁の支援対策
130万円の壁の対策支援は、従業員が100人以下の会社です。
年収が130万円を超えると、社会保険上の配偶者の扶養から外れるため、保険料の自己負担が発生します。
こちらは事業主が「繁忙期に労働時間を増やす」などしたことによる一時的なものである旨を証明すれば、
対象となる従業員はひき続き配偶者の扶養から外れることはありません(最大2年間)。
「年収の壁・支援強化パッケージ」は、扶養の範囲内で働きたい従業員、
パート・アルバイトさんなどを雇用している会社にとって、
従業員が年収の壁を気にせずに働けるようにしていただくための制度です。
詳しくは社会保険労務士さんの業務となりますので、興味がある、使ってみたい、
そう思ったらお尋ねいただくと良いでしょう。
私は税理士ですが、同じ士業としてのネットワークもありますので、
お気軽にお問い合わせください。
メルマガ
【名古屋発!税理士アニキの感動!笑売】
は毎月10 日に更新します。
お楽しみに!
2024年10月10日
相続前には知っておいてほしいこと
税理士事務所の仕事のひとつに相続税を計算することがあります。
最近は相続税に特化して仕事をされている税理士が増えました。
さて相続というのは、人が亡くなってから始まるものと多くの方が思っているのではないでしょうか。
しかし相続税となると、生前から考えておくと良かった~ということが枚挙にいとまがありません。
手遅れにならないために知っておくと良いことを紹介します。
家なき子特例
相続税対策には二つあります。
ひとつは相続する財産を減らすこと。
生前贈与は相続する財産を減らす代表例です。
もうひとつが相続する財産の評価を下げること、です。
相続する財産の評価を下げるものの代表例には小規模宅地の特例があります。
小規模宅地の特例とは、亡くなった人が住んでいた自宅を親族が相続した場合、
その敷地を80%減額して評価できる制度です。
1億円の土地が2,000万になるわけですから、8,000万に相当する税金が節税にります、
すごいですね。
これを使えるかどうかで税金の額が大きく変わります。
なぜこれだけ減額してくれるかというと、税の考え方に弱者保護があるからなんですね。
相続した家に住むのに税金が高くて、
それを支払うために家を泣く泣く手放すなんてことがあったら大変ですよね。
この特例を受けるのは、亡くなった人と自宅を相続する人が同居していた場合に受けられる税制です。
今日、親と同居している世帯は少なくなっています。
「ああ、うちじゃ使えないなぁ」
いえ、待ってください。
一定の要件を満たせば、同居していない親族もこの特例を使えるのです。
その要件とは
相続開始前3年以内に、宅地を相続する親族は、自己または自己の配偶者の持ち家に住んでいないこと
です。
これは通称『家なき子』特例と呼ばれています。
「家を買ってしまってこの特例が使えなかった、もし知っていれば家を買うのは考え直したのに」
これはよく聞く話です。
お墓を建てる
お墓を建てるとよく言いますが、正確にいえば墓地として使用する権利を買うことです。
だからその土地は墓地の運営者になるので、永代使用料の名目でお金を支払います。
それ以外にも管理料や、檀家になるための入檀料も支払うケースもあります。
新しくお墓を建てるとなると墓石を注文します。
価格はピンキリですがおよそ100万円~300万円と言われています。
相続時にはお墓も財産のひとつとして誰かが受け継ぎます。
お墓は民法上「祭祀財産」と呼ばれ、相続税の課税対象外です。
お墓の生前贈与はできません(当たり前と言えば当たり前)が、
相続税対策として、生前にお墓や仏具を買っておくと節税になります。
お墓や仏具は相続財産にならないので、
生前に購入しておけば、相続財産を減らせることになります。
いかがでしょうか。
相続税対策は生きている間から。
亡くなった後では後の祭り、なんてことも。
信用のおける税理士に事前に相談しておくと良いですね。
メルマガ
【名古屋発!税理士アニキの感動!笑売】
は毎月10 日に更新します。
お楽しみに!
2024年9月10日
定額減税とふるさと納税
6月から始まった定額減税ですが、お給料明細をみて
「銀行への振込額が増えた!」
と実感された方もいるでしょうね。
ところで、ふるさと納税はされていますか?
返礼品がもらえるし、住民税の控除等の魅力から、今年もふるさと納税をやろうと思っている方もいるのではないでしょうか。
では定額減税が行われた今年はどうなるんでしょう。
住民税の内訳とふるさと納税
ふるさと納税は、寄附した年の翌年度の個人住民税から一定額の控除を受けることができます。
そしてその特例控除額の控除上限額については、「所得割額」の2割とされています。
ここで「所得割額」とは何でしょう?
個人住民税は、2種類の計算方法で計算されたものの合計額です。
そのひとつが「所得割」で、もうひとつが「均等割」です。
所得割は所得(収入)の多寡によって決まり、均等割は定額(例えば私の住む名古屋市では4,000円)と決まっています。
ふるさと納税をする場合、収入が少ない年は収入があった年と同じ金額を寄付しても、
上限を超えてしまった金額については税金控除の恩恵が受けられないのです。
ふるさと納税に影響のケース
一定の配偶者を有する場合、定額減税が行われたら、令和6年中に寄附する額が令和7年度分のふるさと納税の控除上限額に影響するケースがありえるので要注意です。
住民税における定額減税は、原則として令和6年度分の所得割額から減税額(本人:1万円、控除対象配偶者又は扶養親族:1人につき1万円の合計額)が控除されます。
しかし、夫が高額所得者(毎月のお給料が約100万円以上の方とイメージしてください)の場合、専業主婦の妻の分の減税額1万円は、令和7年度分の所得割額から控除されることになっているのです。
仮にこの方をAさんとしておきますね。
令和6年度分の所得割額については、「定額減税 前 の所得割額」をベースにふるさと納税の控除上限額を算出するという特例が設けられています。
ですので、定額減税は令和5年中に行った寄附額には影響しませんでした(地法附則5の8③)。
ただしこの特例は、令和6年度分の住民税に限った措置であり、令和7年度分には設けられていません。
すると令和7年度分の控除上限額は、「定額減税 後 の所得割額」をベースに算出することになります。
そのため、Aさんが、令和6年中にふるさと納税を行い、令和7年度分の住民税でふるさと納税の控除を受けようとすると、
控除上限額のベースとなる所得割額は、同配偶者の減税額1万円が控除された後の額となるのです。
ふるさと納税は、年末に駆け込みで行う方も多いでしょう。
その場合は、令和7年度分で控除される定額減税額があるのかを確認し、定額減税後の所得割額をベースにした控除上限額を事前につかんでおくとよいでしょう。
メルマガ
【名古屋発!税理士アニキの感動!笑売】
は毎月10 日に更新します。
お楽しみに!